以前勤めていた企業の元同僚と、久しぶりに食事をしたんですよ。
昔話に花を咲かせつつ、最近の会社事情を色々と聞かせてもらいました。
その中でぼくが興味があったのは、2015年12月から本格的に始まったストレスチェック制度の話です。
ぼくも会社と大学で受けた経験があるのですが、カウンセラー目線で見ると色々と問題のある仕組みだと感じていました。
今回は、ストレスチェック制度の流れと、ぼくがカウンセラーの立場から感じた問題点をお話しします。
- ストレスチェック制度とは?
- ストレスチェック制度義務化の背景
- それでもストレスチェックは必要
- 良いケース悪いケースからあぶり出されたこと
- ストレスチェック制度を導入する側の問題点
- まとめ:ストレスチェック制度と理想的な社会
ストレスチェック制度とは?
ストレスチェック制度は、2014年6月に労働安全衛生法の改正によって制度化されたものです。
年に1回、従業員数が50人以上の事業所に対し全従業員へのストレス度合いを知るための検査と、その結果によっては産業カウンセラーなどとの面接による対策を義務化したものです。
ちなみに、義務を課せられるのは企業であって、従業員には課せられていません。
ぼくの経験を含めた、ストレスチェックのおおよその流れは以下の通りです。
ストレスチェックテスト
ウェブブラウザ上で質問に回答していく形式
↓
回答結果に問題がない人は終了
↓
回答結果に問題がある人はメールで面談案内
↓
メールでカウンセラーとの面談日時を調整
↓
カウンセラーと面談
↓
面談の結果により心療内科で受診
ストレスチェックテストは、企業が作成したクラウドサービスを利用することが多いと思います。
ストレスチェックテストの結果、ストレスが高いと診断された人は、ストレスチェックテストの企業を通じてメールでカウンセラーとの面談についての連絡がきます。
その際、所属している企業には連絡されません。
たいていは、ストレスチェックサービスを提供した企業と提携している産業カウンセラーと面談するはずです。
そして、産業カウンセラーが詳細な診察が必要と判断した場合は、心療内科の紹介状を渡されます。
ストレスチェック制度義務化の背景
これを義務付けた背景が振るっていて、一時期盛んにメディアで取り上げられたブラック企業問題も要因の一つとして挙げられるでしょうが、厚生労働省が説明した内容がなかなかにエグいんですよ。
厚生労働省によると、自殺やうつによる経済損失は2009年で2.7兆円なんですって。
その大きな経済損失を減らすために、職場でのストレス対策が必要になったということなんです。
要するに、
ストレス問題がなければ、今よりも国内で2.7兆円はお金が動いているはずじゃん。
ストレスで働けないし、治療で保険料がかかっているし、遊びにも行けないからお金を使わないじゃん。
これじゃあ、景気が良くなるわけないじゃん。
というイメージでいいかと思います。
まあ、読みようによっては、国民の命より景気の心配をしている感じがして震えますね。
それでもストレスチェックは必要
ぼくは、ストレスチェック制度に賛成の立場です。
以前会社員として働いていた時の自分自身の体験と、自分の周りの環境、それは自分が働いていた会社内だけでなく知人が働いていた会社の内情を聞かせてもらうたび、平気な顔をしてバリバリと仕事をこなしているように見せながら、その実、過剰なストレスを抱えている人を早めに把握できる方法が必要だと思っていたんです。
ですから、ぼくがストレスチェックテストを実際に受けた時の設問内容を思い出すと、現状ではチェック方法がザルで正直に言って効果はほとんどないであろう制度ではありますが、まずはスタートしたこと自体が良かったと思っています。
良いケース悪いケースからあぶり出されたこと
ところで、このストレスチェック制度ですが、実施したはいいけどいろいろと混乱が起きているようです。
ぼくが複数の人から聞いた話の中から、よかったケースと悪かったケースをお話しします。
良かったケース
社内では仕事ができると言われていたデザイナー。
勤務態度も良く、周りからは頼り甲斐のある男と思われていましたが、ストレスチェックテストの結果から医師との面談を受けることになったそうです。
その面談で判明したのは、週に数日は深夜2時近くまで働き、家まで自腹でタクシー代を払って帰っていたことです。
案の定、現実はストレスでダウン寸前であることが判明したそうです。
これは、会社にとっては悪習感が外部によってあぶり出された最悪のパターンですよね。
上層部は、こんな事態を誰も把握していなかったのかと青ざめたでしょう。
当のデザイナーは、めちゃくちゃな働き方をしていたことに気づいて、しばらく会社を休んだそうです。
これ、すごくないですか?
本人は、自分が異常な勤務体制で働かさられていたことに気づけなくなっていたんですよ。
ストレスチェック制度が義務化されていなかったら、きっと取り返しのつかないことになっていたでしょうね。
悪かったケース
派遣された産業カウンセラーの能力が低すぎたケースです。
産業カウンセラーが面談に不慣れすぎて、社員を何人もうつ扱いして病院で薬を処方してもらうように紹介状を渡したんだそうです。
それで、社員が心療内科の病院で診察を受けたところ、医師からは「うつではないし、薬も必要ない。」と診断され帰されたんだそうです。
その企業は、社員から誤診の報告を受けて、派遣された産業カウンセラーだけでなく、ストレスチェックテストの信頼性に疑問が生じて混乱したそうです。
ストレスチェック制度を導入する側の問題点
ストレスチェックテスト担当の多くは総務部だと思いますが、そもそも総務部は心の問題を扱うエキスパートが所属する部門というわけではないですよね。
ですから、おそらくストレスチェックテストの内容も理解できないでしょうし、派遣された産業カウンセラーの力量も判断できないでしょう。
たとえ人事部がある企業でも、『人を採用するための目利き』と『社員がダウン寸前かどうかの目利き』は似ているようでまるで異なるスキルですから、専門家としての肩書きが付いている人の診断結果を信じるのが普通です。
ぼく自身、会社員時代から悩みを聞いて欲しいと来る多くの人に対してカウンセリングをしてきたのですが、やっぱり一度はちゃんと話を聞かないと、相手が単に愚痴を言いたいだけなのか、それとも話している内容の裏に本当の問題が隠れているのかが判断できないことが多いです。
まして、ストレスチェックテストはぼくが見た限り、心理学の本を2~3冊読んだことがあれば、何を選択すれば一番健康的な結果になるか、その逆に病気と判断される結果になるかを、けっこう簡単に選択できてしまいます。
つまり、チェックテストの結果を参考にして面談者と対峙するのは問題ないですが、テスト結果を鵜呑みにしてガッツリと先入観を抱いたまま面談者と対峙すると、面談者をミスリードしてしまう可能性が高くなります。
まとめ:ストレスチェック制度と理想的な社会
まあ、いろいろな利権や古い考え方などもあるでしょうし、ビジネスマンをしっかりと救済できる制度に育つにはまだ数年はかかると思います。
だから、ストレスチェック制度が働く多くの人に役立つ仕組みになるまでは、ストレスチェックテストを補完する人的な支援が必要だと思います。
人的な支援とは、
テスト結果がどれくらい的を射ているかチェックすることじゃないか?
と思います。
でも、それよりも日本もアメリカのようにカウンセリングを気軽に受けられる文化が広まるほうが、健全で心の健康を維持するのに理想的だと思うんですよね。
カウンセリングの良さって、仕事や人間関係の築き方や進む方角を話しながら軌道修正できることなんですよね。
ストレスの問題も同じで、カウンセラーに話しながら、
自分がどんな行動、どんな関係に一番ストレスを感じているのか?
そして、一番ストレスを感じていることを迂回したり、ぶつかり方を弱めるにはどうするのが良さそうか?
ということを一緒に考えられることなんですよね。
日本では、カウンセラーの代わりに占い師のところへ行く人もいますけど、
ビジネスマンの中には占い師に、
「あーしなさい、こーしなさい、じゃないと地獄に落ちるよ!」
と指示されることに抵抗を感じる人も多いでしょう?
カウンセリング文化が育ったアメリカ社会などは、きっと仕事や人間関係に関しては占いや宗教に頼るより、現代の心の専門家と話すほうが効率が良くて効果があると広く認められているんでしょうね。
まずは10代の若い人たちの間で、
「悩みを話すなら、占い師よりカウンセラーだよね~。」
と言ってもらえるくらいの認知度になりたいなあ・・・・
なんて思う今日このごろです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!